どうして地震があると円高になるの? 震災と為替の関係について

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こんにちは! FX SQUARE編集部の葉月です。

2016年10月21日金曜日、鳥取県で大きな地震がありました。

皆さんのお住まいの地域に、大きな被害はありませんでしたか?

余震などには、くれぐれも注意してください。

日本は昔から「地震大国」と呼ばれ、大小さまざまな地震が多い国なので、実感はあまりないかもしれませんが、地震は為替にも影響を与えます

一般的に地震が起こると為替は円高に向かいます。

過去の大きな地震「阪神・淡路大震災」「東日本大震災」発生時にも大幅に円高に振れ、今回も例に漏れず、ドル円相場で瞬間的に30銭ほど円高になりました。

しかし、なぜ国の危機的な状況にも関わらず日本円が買われるのでしょう?

他の国で何か災害が起こって円が買われるならまだ分かるけれど、日本で危険なことが起こったら、普通に考えたら円が売られて円安になるんじゃ・・・? それなのにニュースでは「安全資産の円が買われた」と言っている・・・。

でも、その安全資産の国で災害がおきたのに・・・と思った人もいるのでは?

今回は、なぜ地震が起こると円高になるのか、震災と為替の関係についてお伝えします!

過去の地震と為替の関係

冒頭でもお話しした、「阪神・淡路大震災」「東日本大震災」の発生時を取り上げると

1995年1月17日に発生した「阪神・淡路大震災」は、発生直後に一時円高になり、その後4月に一時1米ドル=79.75円をつける円高になりました。

阪神淡路大震災阪神淡路大震災時のドル円相場 円高が進み、一時79.75円を記録。(グラフは終値)

これは当時、為替が変動相場制に移行して以来の円ドル相場の最安値と言われました。

その後の2011年3月11日に発生した「東日本大震災」では、発生直後に1米ドル=81.64円の安値をつけ、その後福島第一原発の事故という問題なども発覚した3月17日に「阪神・淡路大震災」を上回る1米ドル=76.48円という最安値をつけました。

東日本大震災時のドル円相場東日本大震災時のドル円相場

その後、過度な円高を是正するためにG7による協調介入がなされ、一時的に過度な円高局面は脱しました。

なぜ地震が起きると円高になるの?

それでは、なぜ地震が起きると円高になるのでしょうか?

それには実需的な側面と投機的な側面といった2つの要因があります。

①実需的な側面【保険会社のリパトリエーション】

「リパトリエーション」とは、日本語で「本国送還」という意味です。

金融関係では「企業や投資家が海外から本国に資金を引き上げること」を指します。

大震災が起こると、日本の企業や保険会社は復興や地震保険の支払いなどで多額のお金を必要とするため、海外で運用している外貨建て資産を売却し、日本円に換金しようとする動き、つまりリパトリエーションがおこると言われています。これによって円高が進むという見方です。

ただ、これだけでは海外で地震が起きた時の円高には説明がつきません。

震災時円高になるのには、もう一つ要因があります。

それが2つ目の、投機の側面から見た場合です。

②投機的な側面【円キャリートレードの巻き戻し(巻き返し)】

外国人投資家は、低金利である円を借り入れして金利の高い通貨に替え、その国の株式や債券などに投資・運用し、運用益に加えて、金利差を獲得しようとします。これを円キャリートレード(または円借り取引)と言います。

ところが、震災などでリスクを回避する必要が出てきたら、流動性を確保するために、運用していたお金を円に戻す必要があるので、一気に円買いが進みます。

これを円キャリートレードの巻き戻し(巻き返し)と言います。

このトレードは、以前よりは減少していると言われていますが、まだまだ市場には大きな影響を与えています。

日本の投資家も同様で、リスクを取る場面では利回りを求めて低金利通貨である円を売って高金利の通貨を買いますが、一転リスクオフに転じると、まずは手元の流動性を確保しようと円に戻す動きが出てきます。

そして、これらの流れを増殖させているのが、ヘッジファンドを始めとする投機筋です。

リスク回避で円高が進むと読んだヘッジファンドが、一気に円買いを仕掛けてくるのです。

その結果瞬間的に円高になるという現象が起こります。

災害時の円高は続くの?

実際は、大地震が起きて、支払わなければならない保険金が発生した場合でも、毎日膨大な量の通貨が取引される外国為替市場全体の金額からすると、その金額はわずかなものであると言われています。つまり、もしリパトリエーションが起こっても、よっぽどの規模でない限り、円高になる要因にはなりえないということです。

そして、仮に東日本大震災クラスの被災状況であったとしても、リパトリエーションの必要がないと言われています。

これは、地震発生数日後に開催されたG7で、当時の経済財政担当相である与謝野馨氏が、「国内にある円資産で十分すぎる支払い能力を持っている」と話したことからも明らかです。

ただ、その一方で1995年の「阪神・淡路大震災」発生時の円高は、発生後まもなく回復したことと比較すると、2011年の「東日本大震災」発生時の円高は、その後約1年半と比較的長い間円高局面が継続しました。

福島第一原発の事故という問題もあったため、その環境下で外国人投資家は日本投資ポジションを縮小しました。さらに国内でも海外への投資などは控えられ、資金は災害復興などに充てられました。

福島原発事故福島原発事故(イメージ) 地震による津波が大災害を引き起こした。

大災害を経験したことにより、その後の投資マインドも冷え込み、結果として長期的な円高へとつながりました。

地震発生時の円高は投機筋がメインの一過性のものですが、それを長引かせる要因は、その後の被害状況や投資家のマインドによるものだと言えるでしょう。

まとめ

以上のことから、地震発生時の円高は、安全資産だから円が買われるのではなく、投資家のリスクオフの動きに便乗した円買いが大きな要因であることが分かります。

実需が動いていないにも関わらず円高になったり、必要以上に円高が行き過ぎてしまうのには、「今後円高になるだろう」という思惑先行の動きであることがほとんどです。

「みんなが円高になると思っている」というのがポイントで、実態が伴わなくとも為替はその方向に動くということです。

ただし、こういった実態を伴わない投機的な動きは、短期で持っているポジションを決済する(買った円を売る)動きや、過度な円高を進むことを警戒した日銀の介入がなされる可能性もあり、急反発してしまう可能性もあるので、注意が必要です。